名古屋大学医学部環境皮膚科学寄附講座が創設されるまでの歴史
1. 名古屋大学医学部附属医院分室時代
昭和18年9月6日名古屋大学医学部附属医院分室が発足したと同時に分室皮膚・泌尿器科が発足した。科長は専門部皮膚科教授の加納魁一郎であった。後に医学部皮膚科教授となった加納は色素異常症の研究の第一人者で、尋常性白斑の光線治療法、黒皮症のビタミンC大量投与療法を開発した。加納は昭和19年にクロモミコーシスの本邦第1例を報告し、その名は外国の教科書にも記載されている。
2. 名古屋大学医学部附属医院分院時代
昭和19年5月19日に名古屋大学医学部附属医院分室が名古屋大学医学部附属医院分院となり、皮膚泌尿器科長として兼松鋭男が就任した。兼松のもとで故野崎は加納の研究を引き継ぎ、尋常性白斑の治療法として点状植皮療法を開発した。後に野崎は愛知医科大学教授となり、愛知医科大学皮膚科の初代主任教授として活躍した。兼松は昭和30年3月末まで科長として野崎をはじめ故高田(元安城厚生病院皮膚科部長)、稲木、大森、筧(現愛知県皮膚科医会長)等多くの優れた研究者を育成した。この間昭和24年に名古屋大学医学部附属医院分院は名古屋大学医学部附属病院分院と改称された。
3. 名古屋大学医学部附属病院分院時代
昭和30年4月稲木俊二が兼松の後任として皮膚泌尿器科長に就任した。ついで昭和30年11月に大森敏生が皮膚泌尿器科長に就任し昭和32年4月に退職した。昭和33年に筧秀夫が第5代科長に就任した。筧はアトピー性皮膚炎を研究し日本アレルギー学会で活躍した。現在の環境皮膚科学講座の研究主題の一つである皮膚アレルギー疾患の研究の端緒はこの時代に始まった。筧は後に名古屋第一赤十字病院皮膚科部長として転任したが、その研究の流れは上田(現藤田保健衛生大学医学部教授)に引き継がれた。筧の転任の後を受けて昭和38年2月小野猛雄が皮膚泌尿器科長に就任した。昭和38年6月に皮膚科と泌尿器科が分離し森弘文が皮膚科長に就任した。昭和40年4月故井澤洋平(元社会保険中京病院長)が森の後任として第8代皮膚科長に就任した。井澤は熱傷の治療に精力を注ぎ、植皮術、形成外科術の手法を開発し成果をあげた。井澤は後進の育成に力をいれ、井澤科長時代に入局した早川(現環境皮膚科教授)、安積(現国立名古屋病院皮膚科部長)、青山(現愛知医科大学教授)らは夜遅くまで井澤の指導を受けた。井澤はまた、加納、野崎の研究を受け継ぎ色素異常症の治療法の研究をすすめ、メラトニンによる白斑の治療法を開発した。井澤は自らの研究を進めると同時に早川には化粧品皮膚障害、安積には円形脱毛症、青山には蕁麻疹を研究テーマとして与え、それぞれの研究を指導した。青山は蕁麻疹に加えて形成外科にも関心をもち、昭和44年7月に井澤が社会保険中京病院皮膚科部長として転任した折りに、ともに社会保険中京病院へ転任し井澤の熱傷協会設立に協力した。井澤の後任として大橋(元名古屋大学教授)が皮膚科長として就任した。昭和44年11月に上田宏が第10代皮膚科長に就任した。上田は筧の時代に始まったアトピー性皮膚炎の研究を進め、その研究は藤田保健衛生大学医学部皮膚科教授として活躍中の現在まで続いている。昭和50年5月に上田の後任として早川律子が第11代皮膚科長に就任した。早川は日本接触皮膚炎学会、国際接触皮膚炎研究会の事務局長、日本接触皮膚炎学会のOfficial
Journal "Environmental Dermatology"の編集幹事を
つとめ、環境皮膚科学講座創設の基礎を築いた。早川は昭和54年より厚生省の家庭用品に係る皮膚障害モニター、平成5年より科学技術庁専門委員、平成8年より通産省皮膚障害等製品生体障害事故解析技術基盤調査委員会委員長をつとめている。早川科長時代に在籍した松永は現在藤田保健衛生大学医学部皮膚科講師として活躍中である。
4. 名古屋大学大幸医療センター総合診療部皮膚科時代
平成8年12月1日に名古屋大学医学部附属病院分院は名古屋大学大幸医療センターに改組され、皮膚科は総合診療部の一診療科に位置づけされた。名古屋大学大幸医療センターは在宅管理医療部、予防医療部、総合診療部で構成され、診療科として内科、皮膚科、歯科が認められた。早川は皮膚科のチーフとして診療に携わると同時に総合診療部副部長をつとめた。名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科時代の研究活動は、そのまま引き継がれた。
5. 名古屋大学医学部環境皮膚科学寄附講座
平成10年1月名古屋大学医学部環境皮膚科学寄附講座が創設され、早川律子が教授に、加藤佳美が講師に就任した。名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科時代からの研究を続け、特に接触皮膚炎の原因究明、検査方法の確立、アレルゲンの同定・作成、接触皮膚炎のの診断・治療法の研究、アトピー性皮膚炎の原因の同定、治療とスキンケア法の確立、低刺激、低アレルギー性スキンケア製品の開発、職業性皮膚疾患の原因究明、再発予防対策、労働環境の改善等の研究に取り組んでいる。
(文中敬称略、文責 早川)
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